『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』見てきた。思った事を羅列していく。

 


#映画シェフ 三ツ星フードトラック始めました

 

「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブローが「一番作りたい作品を作る」といって10億円以上のギャラを蹴って『アイアンマン』シリーズの監督を降り、作った作品。
ジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演の4役を務める。ロバート・ダウニー・Jr.、スカーレット・ヨハンソンダスティン・ホフマンら豪華ハリウッドスターも顔を出している。

   

あらすじ

一流レストランの料理長のカール・キャスパー(ジョン・ファブロー)はネットで活躍する料理評論家を唸らせようと、通常メニューでは無く特別メニューでもてなそうとするが、レストランのオーナーは他の常連客は通常メニューを求めているとして通常メニューを出すようにと命令する。命令通りに通常メニューを出すが、料理評論家はそれを「客に媚びを売っているようだ。」と酷評する。その後、レストランのオーナーとメニューを巡って対立し、突然店をクビに。次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、絶品のキューバサンドイッチと出逢う。その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミからロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作り、売る旅がスタートする。

 

IMPRESSION

商業主義なレストランのオーナーとの対立は、『アイアンマン』シリーズとジョン・ファブローの関係をどうしても連想してしまう。ジョン・ファブローのインタビューでは「あそこまでケンカはしていない。コメディにするために極端なキャラクターにした。」と語っているが、「制作費を1億ドル出す人の言うことは聞かなきゃならない。」とも語っていて『アイアンマン』シリーズでもアレコレ口出しされていたのかなと想像する。自由にモノを作らせてくれない商業主義を少なからず批判している。

そして、ネットで活躍する料理評論家はもちろん映画評論家そのものかなと。評論家についても作り手の立場を汲まず、心情に一切配慮せずに一方的に酷評する姿勢に”傷ついている”と言葉を漏らす。オーナーからの支持で出した料理もまずければ、レストランではなくシェフが酷評される理不尽さも描かれている。これも映画業界での雇われ監督の理不尽さを現しているのかなと。

フードトラックを始めて、アメリカ横断の旅を経て、ジョン・ファブローは料理評論家の指摘は的を射ていた事に気づく。これはいい評論家が監督を育てるということかなと。終盤には料理評論家と和解するが、その時の会話が素敵だった。

フードトラックでのアメリカ横断の旅の中で、息子との関係を再構築していく過程が素敵だった。息子との間に”料理”という、ジョン・ファブローにとって何事にも譲れないことを通す事で、今まではどうやって接していいのかわからなかった息子を一人の男として扱う。そうして息子も成長し、アメリカ横断の旅でひとつ大人になった気がした。

同時期に『はじまりのうた』や『君が生きた証』などの正当な音楽映画が公開されていて影に隠れてしまっている感もあるけど、本作も音楽が良い。フードトラックはアメリカ横断の旅で各地の名物料理をメニューに加えていくが、フロリダのサルサニューオリンズではスワンプ~テキサスでブルースとアメリカを代表する音楽もまた吸収していく。

ジョン・ファブローらしく、いい加減なところもあるけど、”愛”に満ちた作品だった。次回作はまたビッグバジェットだけど、こういった作品を今後もコンスタントに作って欲しい。

報道による『アメリカン・スナイパー』のネタバレ騒動について思うこと

日本でもようやく先週公開された『アメリカン・スナイパー』、公開2日間で興行収入が3億円越えで初登場1位となりました。

『アメリカン・スナイパー』、『テラハ』抜き初登場1位! 2日間で興収3億円越え | シネマカフェ cinemacafe.net

 

アメリカでは公開されるやいなや、マイケル・ムーア監督やセス・ローゲンツイッターで総批判し、それに応酬するカタチで元副大統領候補サラ・ペイリンやカントリー歌手クレイグ・モーガンら、右寄りの人たちが、『アメリカン・スナイパー』批判者たちを「反米」「売国奴」呼ばわりするなど物議を醸しています。

 

日本ではというと、驚くことに「右か左か」という議論より、鑑賞した方が映画のストーリに言及する事が多く、それに対して未見の方が「ネタバレだ!」と批判する様子が頻繁にうかがえます。

 

史実をもとにした作品では、その史実をどう取捨選択して作品にしたか、それによって監督は何を伝えたいか、どう解釈したかが作品の評価となるのです。なので、どうしてもネタバレありきでの評になってしまうと考えます。作り手側も観客がオチを知っている前提で作るので、そこに作品の重きを置きません。よくある例えですが、”本能寺の変”の作品が作られたとして「織田信長が死ぬ」はネタバレにならないですよね。

 

史実をもとにした作品ではこういったネタバレ騒動というか、議論は度々起きているのですが、今回はちょっと具合が悪い事がおきまして、『アメリカン・スナイパー』のクリス・カイルを○○した男の公判で終身刑の判決がくだされたというニュースが大々的に報道されたのです。

 


「アメリカン・スナイパー」モデルを射殺した男が終身刑

 

これに対してですね「ネタバレだ!」と憤慨する方を多く見かけるのです。確かに報道を見るまでは知らなかったストーリー展開がわかってしまってはいるのですが、それを知ったからといって鑑賞意欲が削がれますかね。作品を楽しめないって考えますかね。

 

ニュース報道に対して怒るというのは、裏を返せば「映画を鑑賞するまでニュース報道するな」と言っているようなもの。そりゃ、史実をもとにした作品でもオチを知らないほうがより楽しめるとは思いますが、いち個人の楽しみのために報道の自重しろという人が多いというのは残念です。

 

 

 

『アメリカン・スナイパー』

『アメリカン・スナイパー』見てきた。

 

感想を上手くまとめきれていない状態で、思ったことを羅列していく。

 

感想を上手くまとめきれていない。というのも、本作はクリント・イーストウッドが観客にどう感じて欲しいか、自身がどう伝えたいか、が極端に省かれていると思う。事実(一部脚色はあるが)を淡々と提示していき、観客に考えさせる部類の作品。だけど大抵はヒントや監督が伝えたいモノが隠されているものだけど、それが本作には一切ない。

 

強いて言うなら、

"戦場に行ったことが無い人間にはわからない"

"戦争で人を殺したことが無い人間は戦争が何たるかをわかってはいけない"

という事かなと解釈。

 

同じく戦争映画の『ブラックホークダウン』のエンディングでフートが言うセリフにもあるが、

 

「国に帰れば、こう訊かれる
『おい、フート、何故戦う?何のために?もしかして戦争中毒なのか?』 
だが、オレは何も応えない。何故か?
どうせ奴らには解らないからさ。
仲間のために戦うってことがな。
それだけ……それだけなんだ。 」

 

わからないんだと思う。寧ろ、わかった気になってはいけないのかな、とも。

 

アメリカ本国ではマイケル・ムーアセス・ローゲンが公の場で批判したり、それに著名人が応酬したりと物議を醸し、炎上マーケティングで大ヒットを記録している。実際に見てみると、上で書いたとおりに、作品自体にメッセージ性は無く、淡々と提示していくだけで、とてもフェアな印象を受けた。

 

事実だけを淡々と描いていると書くとドキュメンタリー的かというとそうでも無く、とても物語的だった。原作ではあまり言及されていない、敵スナイパーにフォーカスをあてた事が大きいと思う。クリス・カイルと同様に凄腕のスナイパーで、同じく味方を助けることに力を尽くし、家族との場面もある。クリス・カイルは相手を"蛮人"と呼ぶが、自らと何ら変わらないのである。こうした敵視点も描く事で、原作から大きな改変を加えずに物語的にするのは、クリント・イーストウッド監督さすが。

 

戦争映画としてはどうか、を考えると、本作は予算もそれほど無く、まともなリハーサルもせずに照明なども使用せずに自然光で1,2カットで撮り終える手法からか、『ブラックホークダウン』や『ハートロッカー』、『ゼロ・ダーク・サーティ』などリアルを追求した大作に比べると見劣りする。

SEALsの訓練シーンも『ローン・サバイバー』や近年出回っているドキュメンタリー映像と比べると物足りなさを感じた。

ターヤが出産したシーンで、子供を抱くシーンがあるのだけど明らかに人形というのもあった。(実際は赤ちゃんを準備していたが、当日に撮影できなくなったから人形に変わったそう。)ディテールにはあまり拘らず、「細かいことは良いんだよ!」的な、クリント・イーストウッド監督らしいっちゃらしいけど。

 

それでも、短いながらも終盤の砂嵐の中の戦闘シークエンスは見事だった。

 

そんな感じ。また思うことがあれば追記していこうかなと思います。

アカデミー賞の脚色賞を受賞した『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』のグレアム・ムーアのスピーチが素晴らしい件

第87回アカデミー賞の脚色賞を『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』のグレアム・ムーアが受賞。受賞後のスピーチが素晴らしかった。

 

 

「皆さん、ありがとうございます。アラン・チューリングは、このような舞台で皆さんの前に立ち表彰されることはありませんでした。でも、私は立っています。これは不公平です。」
「だから短い時間だけど一つ言わせていただきたいです。」
「私は、16歳の時、自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、自分の居場所が無いような気がしたからです。でも、今ここに立っています。」
「この映画を、そういう子供たちに捧げたい。自分は変わり者で居場所がないと感じている若者たちへ。君には居場所があります。そのままで大丈夫。そして、いつか輝く時が来ます。」
「だから君がここに立った時には、この言葉を次につなげて欲しいです。ありがとう。」

今回と言わずにここ数年のアカデミー賞でベストスピーチだと思います。

 

『ゴーン・ガール』のUK盤に日本語字幕・吹替が収録されているらしいので買ってみた。

『ゴーン・ガール』のUK盤に日本語字幕・吹替が収録されているらしいとの情報が多数流れていたので、思い切ってポチっていた。先日、無事に届いたのでレビューを兼ねて記事に。

 

ちなみに買ったのはこれ

 

注文したのが1月22日で、発送されたのが2月1日。届いたのが2月9日。日本からAmazon.ukで購入すると配送が”Standard ”と”AmazonGlobal Priority”と選べるのだけど、”Standard ”を選びんで一週間で届きました。

 

外見と中身、ディスク内容を羅列していく。

外見

パッケージはこんな感じ。

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この中にディスクが入っているケースとアメージング・エイミーの冊子が入っています。

 

ディスクケースはこれ

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プロモーションサイトで使用されていたニュース映像みたいな画がプリントされています。

 

続いて内側

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本編ディスク1枚が収納されています。デジタルコピーの紙切れが挟まっていました。

アメージング・エイミーの冊子の表紙。

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中身は児童書。英語ができない僕でも読めました。

本編ディスク中身

トップメニューもこれ。

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ノイズのように画面が乱れ、作中のシーンが映し出されます。プロモーションサイトと同じ仕掛けだけど、下に流れるテロップの電話番号にダイヤルすると素敵なことがおきます。(公開前には日本からダイヤルできる事を確認したけど今も繋がるか不明)

 

実際に本編を再生してみるとちゃんと日本語字幕・吹替が再生されましたよ。

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ちなみに映像特典は事前のアナウンスであった通り、デヴィッド・フィンチャー監督のオーディオコメンタリーのみ。日本語版は映像特典追加されないなら、もうこれでいいかなーなんて思ってる。

感想

情報サイトなんかを見てると、リージョンBの制限とかを見かけたので不安だったけど、ディスクを挿入するといきなりトップメニューは日本語表示でなんの設定も無しに日本語字幕と吹替で再生できて拍子抜けした。

ちなみにデヴィッド・フィンチャー監督のオーディオコメンタリーの日本語字幕もちゃんと表示される。

僕が買った時は£10.83で送料込みで£14.41。記事を書いてる時点のレートで2600円程。日本で新作ブルーレイを買うより全然安い。

 

Amazon.ukでの買い方

日本とほぼ同じなのですんなり理解できたけど、ここが詳しく書いてあって親切でした。


Amazon.co.uk イギリスのアマゾンで買い物する方法(個人輸入)

配達方法のStandard ”と”AmazonGlobal Priority”で悩むところだけど、繁忙期でなければ”Standard ”でも一週間程で届くので”Standard ”がオススメ。

 

 

『薄氷の殺人』

なかなか時間が作れないから諦めかけていたなか、タマフルでお題作品になったので、『エクソダス:神と王』の吹替版の鑑賞と引き換えに見てきた。

2014年・第64回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と男優賞をダブル受賞したクライムサスペンス。中国北部の地方都市を舞台に、元刑事の男が未解決の猟奇殺人事件の真相に迫っていく姿をスリリングかつリアルに描いた。「こころの湯」の脚本などでも知られ、これが長編監督3作目のディアオ・イーナンがメガホンをとった。1999年、中国の華北地方。ひとりの男の切断された死体が、6つの都市にまたがる15カ所の石炭工場で次々と発見されるという事件が発生。刑事のジャンが捜査を担当するが、容疑者の兄弟が逮捕時に抵抗して射殺されてしまい、真相は闇の中に葬られてしまう。それから5年、警察を辞め、しがない警備員として暮らしていたジャンは、警察が5年前と似た手口の事件を追っていると知り、独自に調査を開始。被害者はいずれも若く美しいウーという未亡人と親密な関係にあり、ジャンもまたウーにひかれていくが……。

 ベルリン国際映画祭金熊賞とったというのもあり、気合いを入れて見に行ったのですが、案外王道のノワールだったので拍子抜けした。

 

石炭を積んだトラックの荷台に置かれたビニールシートで包まれた何か。石炭を下ろすタイミングでそのビニールシートに包まれた何かの主観ショットになったり。容疑者を追い、理髪店へ入ってからの一連の重要なシーンの長回しを固定カメラで撮ったり。トンネルを抜けると1999年から2004年になったり。奇抜なショットが良かった。

 

河北地方のハルビンという街で撮影を行ったそうだけど、街路樹の幹まで凍っていたり、雪を踏む音、マフラー、そしてアイススケートがちゃんと作品に効果的に使われていて良かった。寒冷地の利点を良く作品に取り込めているなと。

 

ウーがとても魅力的に思った。一緒に見た彼女に「ウーが良かったね」というと「男はこういう女が好きなんでしょ。男がこうあって欲しいと思う"不幸な女"みたいで嫌だ。実際はもっと強いもの。演じさせられてるだけ。」と帰ってきて『毛皮のヴィーナス』を思い出してハッとさせられた。

『エクソダス:神と王』

TCX+ドルビーアトモス(2D字幕版)とIMAX(3D)字幕版で鑑賞しました。

 

グラディエーター」の巨匠リドリー・スコットが、旧約聖書の「出エジプト記」に記されたモーゼの奇跡の数々を、最新VFXを満載に3Dで描いた歴史大作。紀元前1300年、栄華を誇るエジプトの王家で養子として育てられたモーゼが、兄弟同然に育ったエジプト王ラムセスに反旗を翻し、たった1人で40万人のヘブライの民を救うため、約束の地を目指す旅を描く。主人公モーゼには、「ダークナイト」3部作のクリスチャン・ベール、ラムセス役には「ゼロ・ダーク・サーティ」「華麗なるギャツビー」などで注目されるジョエル・エドガートン。そのほかベン・キングスレーシガニー・ウィーバーが共演。

 

まず、独自解釈とか云々は置いておいて、本作のスケール感に圧倒されました。宮殿、奴隷街、エジプトの街並、どのセットも豪華で巨大。そして数多く挟まれる空撮の素晴らしさ。本作こそ壮大なスケールという言葉が当てはまる作品です。(戦闘のシーンや空撮のシーンだけでもIMAXで見る価値はあります。)

 

序盤からいきなりヒッタイト人との戦闘から物語が始まるのですが、この戦闘シーンが短いながら秀逸。17台のカメラを使ったとの事。そのせいかカット数は多いのだけど、アクションの流れが遮られない編集は流石。リドリー・スコット作品の中では『ブラックホーク・ダウン』の戦闘シーンを思い起こしました。こういうの得意なんだろうなと再認識させられた。

 

中盤以降はモーゼの追放から結婚とドラマが続くのだけど、要点だけでバッサバッサとぶった切るのはリドリー・スコットぽいなと。正直この辺は眠たくなりましたね。

 

いよいよ”神”(この神も子供ってのが、過去作でさんざん神や宗教を皮肉ってきたリドリー・スコットぽい)に合ってラムセスに宣戦布告。ゲリラ戦をかますものの"神"に「ヌルい!あー、もう!お前は黙って見とれ!」とヤハウェが大暴れ。「エジプト・十の災」の映像はちょっと手抜きというか、仕上げが粗いように感じた。

 

万人にオススメできる作品ではないけど、壮大なスケールの映像は劇場で見る価値はあると思います。予習も特に必要ないのかな。(映画って、見た後にアレって何だったのと調べるくらいでいいよね、と毎度思う。)